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In This Issue:

ISPの No.1 は FreeBSDさ!

Matthew Dillon

FreeBSD ってなに?

Jordan K. Hubbard

FreeBSDで動くCodaファイルシステム

M. Satyanarayanan

もう一つの FreeBSD 成功物語: 大変革を遂げたある ISP

Dan Benjamin

TCJA の web で子供たちと始めよう

Wilko Bulte

FreeBSD と PalmPilot

Oliver Fromme

いかにして FreeBSD は私のお気に入りになったか

Martin Cracauer

FreeBSD で動かすハイファイ・オーディオ

Oliver Fromme

Blender Released!

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ISPの No.1 は FreeBSDさ!
Matthew Dillon
Best Internet Communications社 技術部門
訳: 内川 喜章 <yoshiaki@jp.FreeBSD.ORG>
Daemon

平均的な現在の ISP にとって、 歴史の始まりはたぶん2年とちょっと前ぐらいのものだろう。 もちろんもっと古い ISP も山のようにあるけど、 100%/月の成長を目指して競争してきたのはほんのわずかで、 ISP の中で最大級のものは ISP としてではなく BBS として始まったものだ。 それでもInternet が一般的になり始めたころに、正しいやりかたで始めたとすればあなたたちも私たちのようになっているだろう。 それはその後の急激な成長に伴う緊張と付き合っていかなければならないということだ。

まさしく私たちが始めたのは2年前だった。 最適な市場を経験で鍛えたカンでとらえ素早くとりかかり、それが正しかったことを明らかにした。 あえて選んだ名前 - BEST Internet というゲームは、ユーザ環境を素早くサポートすることが要求されるエンジニアリングとプログラミングの妙技による単純な生存競争というわけだ。

始めた当初は私たちは BSDI と FreeBSD を使った。 それから、その時もう少し努力が足りなければほとんど致命的な誤りになっていたかも知れない変更を行った。 あえて名前は伏せるが、ブランドものの UNIX ベンダの小型マルチプロセッサシステムへの変更だ。 私たちにとっては、拡張可能で商業的なサポートのあるシステムが、 サービスの提供の助けになり、成長に対して十分な余裕を提供してくれる物であってくれなければならなかった。

このミスによって私たちはビジネス以外の部分に大部分の時間を費やすようになった。 スケーラビリティなんて絵に書いた餅で, 小型マルチプロセッサシステムのメンテナンスに必要な仕事は、ほとんど続けるのが不可能なほどに困難になった。 すべてのハードウェアに馬鹿げたほどの量の仕事と資金をつぎ込むことが必要になっていた。 私たちは何週間あるいは何ヵ月もバグフィックスを受けることができなかった。 あらゆる類いの奇妙なライセンス料が必要なせいで "何にでも使える" マシンのインストールは不可能だった。 泥沼の細かな部分については控えておこう。それはあんまり気分のいいものじゃない。

悪夢のような状態だった。 小型マルチプロセッサシステムへ多くのリソースが集中していること、 その小型システムのクラッシュ、ソフトウェアの問題、 インターネット上のセキュリテイ攻撃、 サービスに支障をきたすようなユーザのミスなどが状況を一層悪化させた。

この状況は、BEST社の技術部門が導入した "エンタープライズサーバ" と呼ばれているマルチプロセッサシステムが、 とんでもない間違いであったことの完璧な証明だった。 マルチプロセッサシステム1台がそれぞれ実質的に50万ドルのハードウェアとディスクを要求していながら、 言ってみればほとんど使い物にならなかった。

ラックマウントの Pentium Pro 200MHz システム上で動く FreeBSD へ戻ることは 2点の問題があって心配したが、 実際には問題はなかった。特に ECC と2次キャッシュを内蔵する Pentium Pro 200MHzについては、 信頼性は十分である事が分かった。また、ISP がサポートするすべてのシステムの限界を支配するのは 1 に DISK I/O で 2 に DISK I/O で 3 に DISK I/O であることが分かっている。 (簡単に言えば、2台の小型システムにそれぞれ 10台の SCSIインタフェースを接続したものより10台の FreeBSD システムに置き換えた方が優れている) CPU パワーは重要な要素ではなかったし、現在でもそうではないことがわかっている。 新しいマシンでは普通は CPU の性能の限界のはるかに手前で物理ディスクI/Oの限界に達する。 最悪の場合でも 192MB メモリが必要なだけであると考えたが、 最終的に私たちは、CPU と disk I/O のバランスを考えて Pentium Pro マザーボードの対応する上限の 512MB の RAM をのせた。 大部分の shell システムではそれぞれ 2000ユーザのアカウントがあるが 128MB でうまく動いている。

私たちは小さなシステムの数が増えることでメンテナンスの点を心配をしていた。 実際には 24台の Pentium Pro 200 ベースの FreeBSD システムでは、 2台の小型マルチプロセッサシステムと、付随するさらに小型のベンダ製システムのメンテナンスに費やす時間の半分以下だった。 それが可能になった主な理由は、すべての FreeBSD システムの設定とアップデートはテンプレートになるマシン1台だけで行い、 それをコピーすれば済むということである。それは、ベンダ製マシンでは特に必要があって極端なカスタマイズがされていたり、 資金の節約をしようとしてライセンスをマシンごとに変えてあったりするためにできなかったことでもある。

FreeBSD はニュース配布、ニュースリーダー、Sendmail のバックエンドやその他のさまざまな管理上必要なマシンなどのサービス用に設定を行ったシステムで素晴らしい働きをしてくれている。 単独で最大のコストがかかっているものは ISP でよく使われているラックマウントの PC で、 通常はディスクを持っている。ほとんどのニュース以外の補助的なシステムでは実際のディスク記憶装置を必要としないため、信じられない程安い。shell システムでは 4G と 9G のディスク2台が欲しいが、プロキシシステムでは一般的には 4G のディスク1台で十分だ。 目的に応じてPCのハードウェアの組合わせを柔軟に行うことができることは、 メンテナンス性に影響を与えずに、ちょっと信じられないほどのコストの削減につながる。

結局のところ KISS (Keep It Simple, Stupid: シンプルでバカなままにせよ) の原則を適用した。NFS マウントは(主要な部分では)使わないし、 ユーザが任意の shell システムに login できるようにしようとはしなかった − ログインできるマシンはアカウントのあるマシン1台に限定した。 スレーブニュースの設定を行おうとはしていない。それぞれのニュースリーダーシステムは閉じていてユーザが1つを選ぶと切り替えは行わない。 私たちは負荷が分散してはくれないのではないかと心配した。 実際にはシステム全部できれいに分散してくれた。 確かにshell システムのいくつかでは他のものよりいくらか負荷の高いものもある。 けれどもそれは問題にならないし、気にするほどではない。 たぶん「分散システム」の考え方とは違った道なんだろう。 だけど動いている。それでもうまく動いている。

私たちはかつては苦情の連続にさらされていて、そのうちのかなりの部分はシステムの停止についてだったが今では非常に少なくなっている。 私たちは困難な時を過ごしたが、おかげで新しいマシンを購入するかディスクを追加するような時がきた場合にどのような補充戦略をとるべきかわかった。 今ではそれはとても当たり前のことだ。ユーザ環境はそれぞれ熟成されたマシンの上に作ってある。 さて...それはそれだ。次のマシンに取りかかることにしよう。 私たちは成長カーブのちょっと前に一つ二つのシステムをおいておけばいい。 そうすればすべてはガラスのようになめらかに動く。

フェアな言い方をすれば FreeBSD だけが過去のミスから私たちを救ってくれたわけではない。 しかし現在もビジネスを続けていく力を与えてくれたのは、いずれにしても私たちの選択したものなのだ。 Daemon

訳注: 実際に BEST Internet を利用されている方からの感想を頂きましたので以下に加えさせて頂きます。

私は約2年半 Best Internet を使っていますが、現在は接続性、性能、信頼性に関して文句はまったくありません。 FreeBSD に切り替わる前は
<中略>
マルチプロセッサマシン(8 CPU)で処理を行っていたようです。 一台のマシンに多数 shell アカウントがあり沢山の DISK が見えていました。 DISK が直接つながっていたか NFS でつながっていたかはもう忘れましたがかなりの規模でした。 以前のシステムでも問題は感じていませんでした。 FreeBSD への切り替え時期には旧システムが 4CPU にダウングレードされるなど変な事が行われていましたが pop アクセスが遅くタイムアウトがたまに出た以外の問題はおきませんでした。 FreeBSD を使った新システムはユーザーから見ると大きな変化はありません。 変わったのは shell アカウント用ホストが増えユーザーによって別々のホストが割り当てられたことくらいだと思います。多分これによって shell や pop のレスポンスが良くなるのとスケーラビリティ(ユーザーが増えればマシンをふやして性能問題を解決できる)が良くなったのだと思います(もともと性能が良かったので違いがわかりません)。 FreeBSD システムの信頼性は非常に高いようで Best Internet の Down time はほとんどありませんし性能も十分です。 FTP などはほとんどモデムの性能通りのスピードがでますし、会社の T1 ラインからだと 1Mbps くらいはでます。